官僚系薩摩隼人の悲劇の運命!『薩摩燃ゆ』

本日は安部龍太郎作『薩摩燃ゆ』をご紹介します。
この小説は調所広郷という幕末の薩摩藩の家老を務めた人物を描いた2004年に発表された作品です。
広郷は薩摩藩でも下級の武士の出でありながら、前の藩主であり薩摩の再興を果たした英傑でもある島津重豪に見いだされ出世した人物で、現在でも特に鹿児島では幕末の薩摩の活躍の下ごしらえをした人物として知られています。
彼の主な功績は当時莫大だった藩の借金を帳消しにしながら、藩に財をなさしめ富国強兵策をとれる環境づくりを整備したことなのですが、この作品ではその様子が非常に生き生きとした、そしてまた等身大の語り口で描かれており、藩や商人、また民からも批判されながらも、大儀を目指して苦悩する広郷がまるでそこにいるかのように感じられます。
有能でかつ実直ゆえに生まれる周囲との祖語や、また逆にともに仕事をしていく中で育まれる信頼や友情。時代劇でありながらも現代的なビジネスにも通じる部分も感じられサラリーマンにも共感される作品なのではないかと思います。
またコメからカネへ社会の基盤が移り変わりいく時代、西洋からも新しい思想が流れ込む時代。
価値観が大きく揺らいだ時代における旧来の思想と新規の思想の対立も世相を通じて描かれており歴史のダイナミズムを肌で感じ取れる秀作です。