楽しい書簡形式小説「恋文の技術」

「恋文の技術」は、森見登美彦先生の、書簡形式小説です。

寂しい能登の研究所に出向になった主人公・守田くんが、京都の知り合いとやり取りした手紙の数々を、読者が読んでいくという斬新なスタイル。文通相手は親友や先輩、家庭教師の教え子に、実家の妹。なんと作者の森見先生も、主人公の先輩として登場します。

能登に島流しになった四月から始まり、京都へ帰る十一月まで。手紙の中で守田君は京都を恋しがり、親友の恋にアドバイスをし、教え子の近況を知り……。

そしてだんだん読者は、彼が恋する女性の名前が「伊吹夏子」さんで、守田君は彼女を振り向かせる、素晴らしい恋文の書き方を模索していることが見えてくるのです。
守田君は学業もパッとしないし、見栄っ張りで意中の相手にアタックする度胸もなく、その上スケベ。
でもどこか憎めないところがあって、空回りする彼を、つい応援したくなります。
そんな彼が「おっぱい事件」でダメージを受けながらも努力を重ね、やがて良い手紙の書き方に気づくのが、後半のハイライト。それは「素直な気持ちを、肩肘張らずに書くこと」。
最後に収録されている伊吹さんへの手紙は、まさに集大成。
とても素敵で、必見です。

とはいえ、本文に収録されている、力を込め過ぎた「失敗恋文集」は爆笑モノで、こちらも違う意味で必見です。