香月日輪著の『地獄堂霊界通信1』。
この作家は一昨年に亡くなられているのですが、本書は新たに文庫化されたものです。
デビュー作です。児童文学作家なのです。
本書も児童書として刊行されたものが文庫化されたのです。
ですが、私個人的には一般書籍としても十分楽しめる作品だと思います。だからこそ、文庫化されたと言えるのでしょう。
亡くなられた後に文庫化されるなんて、天国できっと喜ばれていることでしょう。
シリーズものです。現在は、第五弾まで文庫化されています。
その第一弾は、五編の短編連作です。
てつし、椎名、リーチョンという上院町では知らない者がいない三人の悪ガキが主役です。
悪ガキと言っても、心根はいい奴らなのですよね。三人悪と呼ばれています。
理不尽な振る舞いや意地悪な者の行為が許せないのです。そういう奴らを懲らしめる存在なのです。本当の悪ではないのです。
そんな三人悪が謎の薬屋・地獄堂のおやじと出会います。妖怪ではないかという噂もある怪しげなおやじです。
その出会いが三人を変えていくのです。
霊的な力を開花させるのです。
異世界の扉を開くのです。
この三人悪の存在は最強です。いいキャラクターです。
そうそう、地獄堂のおやじの飼い猫ガラコがまた怪しげな猫で興味惹かれる存在です。
物語はいろんな怪事件を解決していきます。
地獄堂のおやじにいろいろと話を聞き、怪しげな者たちと対峙する姿は小学生なのに格好いいです。
呪札や呪文を駆使して活躍する姿を読んで体感してほしいものです。
欲・悲しみ・嫉妬・憎悪といった人間の内面的なものを描かれて深いものを感じさせます。
ちょっとした怖さや切なさや悲しさも感じさせます。
恐れ慄くような物語ではありません。
でも、もしかしたら子供と大人では同じ文章を読んで感じ方が違うかもしれません。
ふとそう感じました。もちろん、大人同士でも感じ方は違うでしょう。
はたして、怖いのは妖怪や幽霊のようなものなのでしょうか。
人間のほうが怖いかもしれません。なんて思うこともあります。
ここに出て来る三人悪のキャラクターが怖さを和らげていることもあるのかもしれません。
正義感ある三人の成長をシリーズ通して見ていきたい作品です。
これは子供だけで楽しむには勿体ない物語です。文庫化されて正解です。
私はそう思いました。