心に残る物語『ツバキ文具店』

小川糸著の『ツバキ文具店』。

文具店であり、代書屋でもあるツバキ文具店。

雨宮鳩子は、祖母でもある先代から墨の磨り方から細かく厳しく指導されていました。

もしも、私だったら嫌気がさしてくることでしょう。

鳩子もそうだったのでしょう。

そこには先代の愛情があったとしても子供の頃にはそう感じられないってことがありますから。

それに代書という仕事ってどうにもすんなり受け入れられないところも私にはあります。

鳩子は高校生のころ、代書することをインチキだと思っていたというようなことも書かれていて、同感してしまいます。

手紙は本人が書いてこそ伝わるものではないのでしょうか。

そう思ってしまいます。

けれど、読み進めていくと代書というものが最初の印象と違って見えてくるのです。

先代のお菓子屋の話がなるほどと思わせてくれました。

手作りのお菓子は間違いなく心がこもっているでしょう。ならば、お菓子屋で買った場合はどうなのでしょうか。

お菓子屋で買ったものも相手のことを思って選んできたもののはずです。

そこに心がこもっていないわけがないのです。

手紙も同じなのかもしれません。

依頼者の想いをくみ取り伝えることは、きっとその手紙にも心がこもっているはずです。

代書って綺麗な文字を書くものかと勝手に思っていたところがあるのですが、この本を読んで違うのだとわかりました。

依頼者になりきり書く文字は、まさに本人が書いたそのものだと言えます。

凄いです。その人の癖のある文字もそこにはあるのです。

それに、本書では直筆で書かれた手紙のようになっていてそれぞれ文字がまったく異なります。その手紙を読んでいると心に響いてきます。

手紙、いいですね。

文字から滲んで来る想いがそこにはあります。

本書に出て来る先代の手紙、それに鳩子が亡き先代に宛てた手紙は特に胸に沁みてきます。

今の時代、手紙を書く人も少なくなっていることでしょう。

けれど、この本書を読むと手紙を書きたくなってきます。

改めて手紙の良さを再認識出来る素敵な物語です。

そうそう、この物語には実際にある鎌倉のお店や神社仏閣が登場します。

どこも素敵な場所です。

読んでいると、行ってみたいと思ってしまいます。

鎌倉という場所とこのツバキ文具店はぴったりな存在かもしれません。

手紙のいい文化と心が安らぐ鎌倉の地。

この優し気で素敵な世界観を是非堪能してみてください。