『時間封鎖』

ヒューゴー賞受賞はダテじゃない! 

「宇宙消失」のせいもあり超ハード系SFだと思いきや.. それだけだったら星雲賞は取れないですよね!(←私の偏見でしょうか?) ストーリーの完成度も文句なしの水準で、実に読みやすい(*訳も実に、素晴らしい)。

訳者さんが下巻末で作品の魅力を全て描写しきっているのでアレですが、SF設定の壮大さも素晴らしい!一方で、人物描写が本当に緻密で、「読ませる」のです。主要登場人物はそうは多くないので更に読みやすい(その他の人物の描写も実に丁寧)。それぞれの生き方の対比だけで充分..人間、というものに近づくことができる。また科学と政治と宗教の相克についても多くのページが割かれている(しかしサイモン..救いがないねぇ)。訳者の方の仰るように全編「純文学と見紛うばかりの」高い水準で、格調高い人間ドラマが展開する。

主要人物ではないと思っていた某登場人物が終盤実に生き生きと動き出し..

「-世界は驚きで溢れているのよ。生まれたときから、人間は自分のなかに他人を抱えているものだし、その他人をちゃんと紹介してくれる人なんか、どこにもいないの」(下巻p333) 至言ですね。

SFアイディアもかなりの規模なのですが、説明が工夫されていて実に読みやすい。ハードSF読みでなくても大丈夫なレベル。それでいて「SFを読む楽しさ」というものも、読んでいて充分に感じられる。現代と過去を絶妙に交錯させたつくりも実に上手く、重要人物の死を巡るある種のミステリーとして読める部分も、ある。

正直期待していなかったのだけど、「世界の終り」へ至る描写も実にリアルで見事。そして遂に膜が消失(?)した日の..凄まじい恐怖と終末感の描写も。

完璧です。

グレッグ・ベアの「火星転移」もまた、密度の高い人間(恋愛/純愛)ドラマと超巨大規模のハードSFとの見事な融合を実現させた傑作でしたけど..(そういう意味でも、「火星転移」と本作は実によく似ている、と私は思う) 本作品は個人的にはそれを越えた感動をもたらします。